連続講座「2024年度・レジリエンス―人間と社会の強靭性を考える」第2回開催レポート

今年度、現代社会が直面する様々な危機にどう対応していくべきなのか、社会との対話を通じて実践的な知恵を育むことを目指し、一般の方々も参加できる連続講座を開催しています。

すでに、すべての講座のお申込みを終了しており、「レジリエンス」という概念が私たちの日常生活においても重要性を増していることが表れているかもしれません。ご参加できない方や改めて講義を見直したい方に向けて、毎回の講義動画を公開いたします。

第2回講義では、京都大学大学院人間・環境学研究科の柴山桂太准教授が「グローバル化時代の複合危機」というテーマで講演を行いました。柴山准教授は、グローバル化が引き起こすさまざまな危機が複合的に重なり合い、現代社会において深刻な問題が生じている現状を解説し、こうした複合危機に対応するための「レジリエンス」の重要性について深く掘り下げました。

【開催概要】
日 時:2024年9月21日(土)16:00-18:00
登壇者:柴山 桂太 京都大学大学院人間・環境学研究科准教授
テーマ: グローバル化時代の複合危機


柴山准教授は、今日の世界経済が高度な相互依存関係により成り立っていることに触れ、リーマンショックやパンデミック、ウクライナ侵攻などのように、個々の危機が互いに連鎖し、単一の問題では収まらない「複合危機」へと発展する傾向が強まっていると指摘します。この新たな危機構造に対し、柴山准教授は、単なる成長や効率性の追求ではなく、レジリエンス(しなやかな強さ)を重視した社会構築が求められていると述べました。

従来の「選択と集中」による経済モデルは、グローバルなショックに対して脆弱であるとし、多様な産業基盤の維持が、社会全体の回復力や危機耐性を強化する鍵であると主張しました。

講義の後半では、柴山准教授は複合危機に対応するために、危機を総合的・包括的に捉える政策が必要であると指摘します。パンデミック対策においても、感染防止のみに留まらず、経済や教育など社会全般への影響を視野に入れた包括的な政策が求められているのです。また、グローバル化が進展することで多国籍企業や国際的なルールが影響力を持つようになり、国家が自国内の経済や政策を自由にコントロールしづらくなり、そのために国家の統治力が相対的に小さくなっていると言及しました。これらの危機の複雑化が進む中で政策の質と実行力を高める必要性があると強調しました。

危機の複雑化が進むほど完全な予防が難しいことから、社会や個人に求められるのが「精神的強靭性」になります。心理学のレジリエンス研究に示唆されるように、逆境を乗り越えた人々がその経験を通じて、より高い幸福度を実現するケースがあります。同様に社会や国家においても、危機に立ち向かう「心の強さ」と「適応力」が重要であると柴山准教授は述べています。危機を前提とした「共存の姿勢」を持ち、負の影響を最小限に抑え、迅速に回復するための政策の必要性も訴えました。

第3回は、京都大学経営管理大学院レジリエンス経営科学研究寄附講座客員教授・白水 靖郎教授による「公民連携の功罪」となります。公開まで今しばらくお待ちください。

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