【講義動画を公開いたしました】京都大学経営管理大学院レジリエンス経営科学研究寄附講座・主催 連続講座「2024年度・レジリエンス―人間と社会の強靭性を考える」第1回開催レポート
今年度、現代社会が直面する様々な危機にどう対応していくべきなのか、社会との対話を通じて実践的な知恵を育むことを目指し、一般の方々も参加できる連続講座を開催しています。
すでに、すべての講座のお申込みを終了しており、「レジリエンス」という概念が私たちの日常生活においても重要性を増していることが表れているかもしれません。ご参加できない方や改めて講義を見直したい方に向けて、毎回の講義動画を公開いたします。
【第1回】
日 時:2024年 8月24日(土) 16:00-18:00
登壇者:浜崎 洋介 京都大学経営管理大学院 レジリエンス経営科学研究寄附講座准教授、文芸批評家
テーマ:現代の超克―戦後社会の脆弱性を乗り越えるために
第1回では、経営管理大学院の浜崎洋介特定准教授が講師を担当し、レジリエンスの基礎的な概念から解説を始め、日本におけるレジリエンスの問題が個人と国家のあり方と密接に関わってきたという歴史的な背景にまで話を広げました。
浜崎准教授は、レジリエンス(強靭性)は単なる「強さ」とは異なり、その本質は「しなやかさ」にあると話します。現代社会では予測可能で堅固なシステムづくりに注力してきましたが、それだけでは不十分であり、個人の挫折から自然災害、パンデミック、国際紛争、経済危機まで、様々な課題に対応するには「しなやかな強さ」が求められているのです。
レジリエンスの具体例として、昨年度開催された「京都大学レジリエンス・フェスティバル2023」において、レジリエンスを研究する他の専門家たちが指摘された自然災害、医療、経済の3つの分野を紹介しました。
自然災害のレジリエンスにおいては、効率性を重視した災害対策・復興支援によるインフラ投資の東京一極集中が加速している状況があります。そして、同時に国家の基礎となるインフラ整備について、長期的な国家ビジョンの欠如があると指摘されています。
医療分野では、社会の共通資本である医療の大部分を民間に委ねる特殊な構造が課題となっています。この市場原理に基づく運営が、過剰医療につながると指摘されています。
経済面は格差の拡大によって、階層間で価値観や考え方の相違が生じ、「日本国民」という共通認識に基づく建設的な議論や合意形成が困難になっています。その結果、階層間の対立が深刻化し、相互理解を欠いた社会の分断につながる可能性があります。
浜崎准教授は、日本のレジリエンスに関する重要な課題として日本人が国家や大局的な視点について、十分に議論できていないという点を強調しました。過去20~30年間、日本社会は個別の問題に対して場当たり的な対応を続ける一方で、国家全体を見据えた議論が不足し、この状況が現代日本が直面する様々な問題の根源になっているのではないか。さらに、日本には国家について深く考える思考法や、それを訓練する場が欠如していると述べ、国家と国民の適切な関係性を構築できない価値観があるのではないかと推測し、その起源を歴史的文脈の中で探っていきます。
さらに、後半には工学部の川端祐一郎准教授とともにレジリエンスへの関心の原点や、強靭性を追求することの意義について深く掘り下げ、参加者に新たな視点を提供しました。
第2回は、人間・環境学研究科・柴山 桂太准教授による「グローバル化時代の複合危機」となります。公開まで今しばらくお待ちください。