各企業は今、パンデミックや地震・風水害等の自然災害、地政学的紛争リスク、世界同時不況等、各種のリスクに直面しています。それゆえ、各企業の事業継続を企図するうえで必要不可欠なのが、各企業に関わる諸組織、すなわち、個々の企業を中心として、その企業に関わる地域や業界、地方自治体や国家等のレジリエンス(resilience, 強靱性)です。レジリエンスの確保の重要性は、近年認識されつつあるものの、必ずしも各種リスクの発生下でも事業継続を可能とする共同性とその基盤、すなわち「レジリエンス」に対する理解とその実践が十分に展開されている状況にあるとは言い難いでしょう。

本講座は、各種の危機に対応可能なレジリエンスに関する文理融合研究を推進すると同時に、その研究成果を踏まえた社会教育・啓発活動を実践的に展開します。それらを通して、レジリエンス概念に基づいた企業経営者の人材育成を図るとともに、レジリエントな企業経営に貢献する社会状況、世論状況、行政等の経営環境の創出が可能な人材の育成を図ることを目的とするものです。それゆえ本講座では、例えば、人々が何を危機と認識し如何に対応するのかについての実践的な人文社会科学研究、グローバル経済や自然災害などの各種の危機を想定した事業継続計画を高度化するための基礎的・実践的研究——人を動かし、一定の共同性・凝集性を作る上で不可欠な思想・文化・歴史、そして、そのレジリエンスを高めていく上で必要となる人文・社会科学・社会工学分野での探求——を実施します。